徳川将軍家と大奥のブログ
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「炎の陽明学 山田方谷伝」 矢吹邦彦
2012/06/10 15:33 [Sun]
category:歴本の勝手書評
この本の著者は方谷と生涯を通じて深い親交があった矢吹久次郎の子孫にあたる矢吹邦彦氏が幕末期に備中松山藩の宰相を務めた山田方谷の生涯を詳細に追った本です。

方谷は当代きっての思想家であり政治家でしたが、その偉業はおろか、その名前さえも知らない人が驚くほど多いように思います。

方谷は農商の出身でしたが、幼いころより学問で身を立てることを志します。江戸の佐藤一斎塾では吉田松陰の師である佐久間象山と同門でしたが、兄弟子である象山を超えて、塾頭を務めるほどの学者でした。
方谷の偉大さは当代一の学者でありながら、松山藩の宰相に取り立てられると破綻寸前の松山藩の改革を短期間で鮮やかに成し遂げたことにあります。
その改革は経世在民の信念に貫かれ、厳しい質素倹約政策の中でも下級武士には減俸を及ぼさなかったり、領民からの饗応を一切禁止するなど弱者保護を一貫して行っています。
また、単に財再改革に留まることなく、軍制改革や教育改革にも取り組み、特に軍制改革においては農民に洋式調練を施し、これを見た長州の久坂玄瑞が大いに驚き、後の奇兵隊のヒントとなったとも言われています。

方谷は、その行動が示すように知行一致を旨とする陽明学の第一人者でしたが、自身は陽明学が非常に危険なものであることを熟知しており、王陽明の行動や言動をそのままま実践することをおろかなことであると述べており、安易に陽明学を講義することもなかったと言われています。

また、藩主が最後の筆頭老中である板倉勝静であったことから、松山藩は賊軍となり、藩主不在の中でその収拾にも見事な手腕を発揮しています。王政復古後は新政府から官に就くことを強く要請されますが、これを断り、在野にあって教育に力を注ぎ、多くの人材を育てています。

司馬遼太郎は方谷を評して「方谷は偉すぎる。偉すぎて小説にならない。」「木戸孝允より3倍ほど人間的に偉かった。河井継之助が、日本で一番偉い人だと考えていた。」

この本では方谷の偉業を称えるのみではなく、方谷の様々な苦悩についても述べられています。
著者はサラリーマン生活の傍ら、長い年月をかけ、このような大著をまとめられたことに尊敬の念を持つと同時に歴史愛好家としては非常に羨ましくも感じました。
山田方谷を知らない方はぜひ読んでいただきたい。一押しの本です。




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「親鸞 激動編」 五木 寛之
2012/05/27 20:04 [Sun]
category:歴本の勝手書評
前作「親鸞」に続き、激動編を読みました。
親鸞は弟子たちにより浄土真宗の宗祖とされますが、親鸞自身の自伝が残っておらず、一時はその実在さえ、疑問視する説があったほど、その生涯は不明な点が多い人物です。
そういった意味では、この小説はいわゆる歴史小説ではありません。
ただし、ある程度の史実は踏まえてのストーリー展開となっています。

この小説では、親鸞を偉人として描いていません。
むしろ親鸞自身が自分の様々な未熟さに悩む姿が描かれています。
念仏というものが民衆に理解されない焦燥感、家族愛に薄い自分に対する嫌悪感、妻・恵信に対する様々な思い。

念仏を唱えることによって、なぜ救われるのか?救われるとはどういうことなのか?
専修念仏について明快な答えが描かれているわけではありませんが、著者が読者に示唆を与える箇所は随所に出てきます。

しかし、私自身、宗教に対する疑心と興味が入り混じった平均的な日本人なので、あまり宗教的な内容だと拒否反応が出てしまいますが、この小説にはそんな押し付けはありません。

「酒ものむ。鳥や、けものの肉も食う。
人々が大事にしているものに対しては、ちゃんと敬意をはらう。
なにごともばかにしたりはしない。」
親鸞の言葉ですが自分を省みて印象に残った言葉でした。

3部作とのことなので、続編が非常に楽しみです。

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「天皇の暗号」 大野 芳
2012/01/01 02:44 [Sun]
category:歴本の勝手書評
明けましておめでとうございます。
昨年は非常に辛い年となりましたが、2012年は希望の光が見出せる素晴らしい年となることを願ってやみません。

年末までに読了を目指し、ギリギリまでかかりましたが「天皇の暗号」をご紹介します。

天皇の系譜にまつわる大きな問題を取り上げた意欲作だと思うのですが、様々な時代や事柄に唐突に話が展開するために非常に難解なものとなっています。
しかし、タブーに挑戦した内容であり、真実にたどり着けるほどの説得力は残念ながらないものの、独自取材を織り交ぜながらの大変興味深い話がいくつもありました。

明治天皇の先帝である孝明天皇の死の謎をエピローグとして、太平洋戦争後に世上を賑わした南朝の末裔を自称する熊沢天皇の話題から話が展開していきます。

現在の天皇家は北朝系統とされていますが、実は明治維新は南朝革命であったのだ。
孝明天皇は毒殺されたのであり、明治天皇もまた南朝方の末裔と入れ替わったのだ・・・と。

本書にあるように14世紀の南北朝時代の余波が大きく時を隔てて、幕末の動乱に大きく影響を与えたという視点はユニークであり、歴史の醍醐味を感じさせてくれる本でした。

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「その時歴史は動かなかった!?」  鈴木 眞哉
2011/02/05 18:24 [Sat]
category:歴本の勝手書評
著者には、一般に歴史常識とされている事柄がいかに根拠が乏しいままに流布されているか、「後ろ向きの予言」(結果から原因や過程を遡って解釈する)が歴史解釈をゆがめているかをテーマとする著作が数多い。

本書は、NHK歴史番組「その時歴史は動いた」の視点を検証するものであるが、番組批判は意図していないと断った上で様々な視点で「その時」に疑問を投げかけている。

テーマが多いために、やや掘り下げ不足の感があるが、在野の歴史家らしく、わかりやすく歴史を視るには複眼が必要であることを教えてくれる。

例えば、平清盛の「六波羅幕府」、源頼朝が実は肉親の情に厚いこと、承久の乱の功労者は大江広元など。
特に関ヶ原の戦いにおける家康、三成比較論にいまだに「結果論者の天下」が横行しているという指摘は我が意を得たりである。
このことが家康の評価を下げることにはならないのである。

ただ、最初の断りにも拘らず「その時歴史は動いた」の揚足取りに過ぎるきらいがあるのが惜しいところである。

「それからの海舟」 半藤一利
2011/02/05 18:21 [Sat]
category:歴本の勝手書評
筆者は東京下町生まれで根っからの江戸っ子。

同じ江戸っ子の海舟に心酔して、贔屓の引き倒しとなってることを隠さずに海舟論を展開している。
一方で海舟の心情を斟酌してもなお、海舟批判論に一定の理解をしているあたりは、筆者の歴史家としての見識の高さを感じる。

全体が主に海舟の日記を引用して、江戸っ子の語り口調で平易に述べられている。歴史とは立場によって、見える景色が違うということを改めて印象付けられた。


絶対おすすめ!

管理人の所蔵本のうち、価値ある本としておすすめする本です

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