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西郷の心を動かしたもの1
2008/12/26 14:04 [Fri]
category:その他
江戸城の無血開城は、いろんな糸が絡み合い奇跡のように実現した政治劇でした。
その後、東北戦争箱館戦争と内戦が続き、痛ましい血が流されることになりますが、大きな革命であった割に混乱が少なかったのは、江戸城の無血開城が実現したからなのです。

徳川家康は、大坂の陣によって、前政権者であった豊臣家を完全に葬りました。
政権を奪取するには、前政権をシンボリックに葬るというのが常套であるのです。

明治新政府は、江戸城総攻撃を慶応4(1868)年3月15日と定めて、静寛院宮(せいかんいんのみや、14代将軍・家茂の御台所・和宮)の許婚であった有栖川宮熾仁親王(ありすがわのみや たるひとしんのう)を大総督宮とした東征軍を組織し、江戸城を目指して進軍を始めました。

ところが、旧幕府の全権委任を受けた勝海舟と東征大総督府参謀の西郷隆盛の二度に渡る会談によって、江戸城の開城や武器の引渡し、慶喜の水戸での隠居などの条件によって江戸城総攻撃は中止され、ここに家康以来の徳川幕府は終焉を迎えました。

西郷に江戸城総攻撃の中止を決断させたもの、それは何だったのでしょうか。

NHK大河ドラマ「篤姫」では、天璋院(篤姫)は、まず静寛院宮に朝廷宛の書状を出すことを依頼し、自らも西郷にあてて書状を出しています。書状は、両方とも慶喜の不始末を詫びるとともに自分の一命をかけて徳川家の存続を願うというものです。
そして、亡き島津斉彬の書状を勝海舟に託すことによって、西郷の心を動かしたというストーリーとなっていましたが斉彬の書状の事は、原作者の創作と思われます。

皇女であり内親王である静寛院宮が朝廷に、島津斉彬の養女である天璋院が薩摩隊に向けての真摯な歎願は、恐らくは維新政府側に強いインパクトを与えたでしょう。
天璋院の書状は有名であるために篤姫の歎願が徳川家を救ったと論じられる場合もありますが、政局を変える決定的な要因となったとは思えません。

実は、幕府の全権が勝海舟であった事も大きかったのではないかと思います。
西郷と勝の関係は次のようなものです。

10年前の安政5(1858)年、勝は海軍伝習所幹部として咸臨丸に乗って薩摩を訪問しており、その時に西郷の主君・島津斉彬に会っています。
斉彬は勝の先見性に大いに信頼を寄せて、その後も書状で意見交換するほどでした。
西郷も勝の名前は知っていたことでしょう。

西郷が始めて勝に会ったのは、元治元(1864)年でした。
西郷は、勝の印象を大久保一蔵(利通)あての書状に興奮気味に書いています。
勝に打ち勝つつもりが頭を下げることになったこと、どれほどの知略があるか知れない人物で学問見識は佐久間象山が抜群だが人物としては佐久間を超えるということ、勝先生にひどく惚れてしまったこと、などが述べられています。

時が経ち、新政府側、旧幕側の代表として会談に臨んだ時に西郷の胸には、どんな思いが去来したでしょうか。
勝が訴える「外国の侮りを受けないためには、日本人同士が争っている場合ではない」という言葉が重く響いたに違いありません。

西郷が江戸城総攻撃を中止した理由は、英国公使パークスの意向など他にもありますが、それについては次回に。


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